以上の議論を整理すると、平等原則は自由権に適用すると解釈すれば、平等原則は、差別されない権利を侵害することはなく、また、公共の福祉の観点で制限を課されることのない、個人の人格の自律を支える切り札としての権利の一つになる。
一方、請求権と国民の義務には、平等原則ではなく公平原則(定義案:国民は一人ひとりが異なることに配慮しかつ差別をせず偏向せずえこひいきせずに扱う原則)が適用されると考えるのが妥当。家計応援給付の例に、公平原則を適用すれば、差別されない権利の侵害は防げる。
平等権について第1章で言及した時に、選挙区の投票価値の較差が許容範囲かどうかといった、公共の福祉を勘案した総合的な判断に付される場合があると述べたが、参政権は請求権。一票の格差の問題は、地域毎の特性を考慮する総合的判断が必要という点で、公平原則の適用対象だろう。
公平原則はその定義により、差別されない権利を侵害することはない。請求権は国家行為を要請する権利なので、公平原則の適用に当たり、公共の福祉の観点で制限が課される場合は当然出てくる。
十四条一項後段の「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」は、差別されない権利を規定している。
なお「人種、信条、……経済的又は社会的関係において」の部分は、例を挙げているだけで、差別の定義に当てはまることは、これらの例に限らず全て差別されない権利の対象になると解釈する。
木村・憲法(195から196頁)によれば、差別されない権利には、次の二つの内容が含まれる。第一に、国家による差別的行為をされない権利。第二に、国家が社会にまん延する差別を助長することを認識しながら、あえて差別助長行為をした場合に、その是正を求める権利。
繰り返しになるが、差別されない権利は、公共の福祉の観点での制限を課されることのない切り札としての権利の中でも、その理念(個人の人格の根源的な平等性)を体現する切り札中の切り札としての権利である。
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