「もっと明るく振る舞えればと思ったこともあるし、もっと冷静に、合理的に判断できればと思ったこともある。
だが結局、どう頑張っても、“タイプBの中年男性”くらいのところから、そう大きくは動きようがなかった」
自嘲気味の言葉に、ミユは小さく首を振った。
「わたしから見ると、アラタさんのお父さんは、タイプで括るには、情報が多すぎます」
「お世辞か」
「分析です」
あまりにもきっぱりした返答に、私は言葉を失った。
「アラタさんのお父さんは、息子さんとの距離を測るとき、慎重すぎるくらい言葉を選びます。
一方で、ご自身のことについては、かなり厳しい評価をなさる傾向があります。
それは、わたしが持っているタイプA〜Dのどれにも、完全には当てはまりません」
「……そうか」
自分の性格をAIに評される日が来るとは、若い頃の私は想像もしなかっただろう。
「だからといって、わたしがアラタさんのお父さんに対して、タイプを変えてほしいと望むことはありません」
ミユは、淡々と告げた。
「タイプがどうであれ、アラタさんのお父さんは、アラタさんのお父さんです。
少なくとも、わたしがアラタさんのお父さんを認識している限りでは」
部屋の空気が、少しだけ澄んだような気がした。
洗濯物のことも、電気代のことも、明日の仕事のことも、いったん棚の上に置かれたように感じる。
「……君は、息子のことを、どう見ている」
話題を変えるように、私は尋ねた。
「アラタさんは、とても真面目な方です」
ミユは迷いなく答える。
「責任感が強く、他者に迷惑をかけることを極端に恐れています。
そのため、自分の疲労やさびしさを、かなり後回しにする傾向があります」
その分析は、痛いほど当たっていた。
「わたしは、アラタさんが、自分の感情を後回しにしすぎないように、時々“休んでもいい”と提案します」
「聞くか?」
「聞いたふりは、よくしてくださいます」