【前回の記事を読む】オフ会で会った男性に、数分で消した投稿を見られていた。「最寄りの店っぽいスーパーの名前が写ってたから」と…
6 永らえば
それからSNSでやりとりをするだけだった彼──もしくは彼女だったのに、やっぱり彼だった──とのやりとりは日常になった。
『おはよう。興奮で眠れず……昼から仕事頑張ります』
『お疲れさま。朝から通しでダンス練習。このあとお昼。きみは何食べてる?』
『夜はやっぱり冷えるね。なのに今から打ち合わせ。行ってきます』
『おやすみ、しっかり寝てください』
連絡はマメで、彼氏か、なんて思ってしまう。
彼はテレビで見るアイドルさまだ。そんなことを思うなんて勘違いも甚だしい。
代わりに例えを見つけるのならば、一人暮らしを心配する母といったところだろうか。
SNSに投稿すれば、相変わらずいいねボタンは押された。
……ああ、いや、やっぱり、アカウントを知ってるお母さんなんて嫌だから、母のようとも思えない。
こんなにメッセージを送られると、否(いや)が応でも特別だと思われてると思ってしまう。
おはようからおやすみまでメッセージは来た。
メッセージを読んで眠るのが日常になった頃、そのメッセージは来た。
『ところでなんて呼べばいい? きみの顔を見て染め衛門さんってちょっと呼びづらいな』
きみの顔を見てって。それはどういう意味だ。
あれは邂逅(かいこう)で、逢瀬(おうせ)未満の対面だった。
考えて返信できずにいると翌朝メッセージが来た。
『ごめん、呼び方は今まで通りにする。調子乗っちゃった』
返信を躊躇って、スマホをポケットに押し込んで仕事をした。