休憩を挟みながら3時間の指導を行ったが、驚いたことに彼女の学力は完璧だった。家庭教師など雇わずとも、東都女学院どころか、どこの難関校でも合格できるだろう。

終始、感情の動かなかった彼女だが、僕が一つだけ踏み込んだ質問をした時、その瞳の奥が微かに揺れた。

「……本当に、東都女学院に行きたいの?」

瞬間、彼女の瞳孔がわずかに開くのを感じた。

彼女からは、高校へ行きたいという意思が微塵も感じられなかった。だからこそ、僕はつい自分に言えた義理ではない言葉を口にしてしまった。

「君の人生なんだから、君のしたいことをしないと、人生楽しめないよ」

その瞬間、彼女から向けられたのは、心底蔑むような、汚物を見るかのような冷ややかな視線だった。

 

初日で2度までも地雷を踏み抜いてしまった。

クビになる恐怖と、紹介してくれた東屋さんの顔に泥を塗ってしまった申し訳なさ。僕は頭を抱えながらアパートへ帰り、深い後悔に苛まれていた。その時、スマートフォンに東屋さんからの通知が届いた。

『波瑠から連絡があったよ。「雑音みたいで、どんな環境でも集中できるか試されているようだ」だって。ひとまず、今後もよろしく頼むよ』

皮肉めいた評価に僕は力なく笑った。

けれど、クビを免れたことへの安堵が重い泥のような眠りへと僕を誘った。

次回更新は8月11日(火)、20時の予定です。

 

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