「だから、あなたの故郷は……」
「……万葉の里」
翌日の別れの朝、加奈子は昨日の飛鳥山での香織との不思議な会話を思い出しながら、疑問に思うことをいろいろ尋ねてみた。しかし、香織は、優しく微笑むだけで、詳しいことは何も話そうとはせず、最後まで「万葉の里」の所在を明かすことはなかった。
それでも、最後の別れという時になって初めて、これまでの香織とは別人のような不思議な「別れの言葉」を告げ、加奈子のもとを去っていった。
ありがとう。あなたに巡り会えて本当によかったと思っています。
でも、これでお別れです。そして、もう二度とお会いすることもないでしょう。だから、わたしのことは忘れてください。
それともう一つ、わたしが見せたあの歌のことも。そして、約束してください、わたしのことを決して探さないって。このことだけは、必ず守ってください。約束の時間が迫ってきました。もう行かなければなりません。さようなら……。
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