【前回記事を読む】バイト代のほとんどが、妹の治療費に消えていた。目覚めない妹の寝顔を見ていると、どす黒い感情がせり上がってきて…

一万円で君と会いたい

起 呪縛

病院を後にし、僕はそのまま大学へと向かった。

母との約束を破る罪悪感と、自ら遊びに加わろうとする緊張で、心臓が口から飛び出しそうなほど激しく脈打っている。

仲間たちはいつも、こんな重苦しい緊張に耐えながら僕を誘い続けてくれていたのだろうか。そう思うと、申し訳なさで頭がいっぱいになった。

時計の針は16時を回っていた。いつもの講義時間はとうに過ぎている。教室の扉を開けると、そこには見慣れた仲間たちがいた。

「御幸! 今日は来ないのかと思ってたよ。心配したぞ」

「平くん。大学を休んで今日はどうしたんだね?」

仲間たちの声に混じって、教授が穏やかに声をかけてくれた。その声を聞いた瞬間、張り詰めていた糸がふっと緩むのを感じた。

「あの……今日の集まり、もしよければ僕も参加していいかな?」

問いかける僕の顔は、自分でもわかるほど赤くなっていたと思う。

仲間たちは一瞬、驚いたように顔を見合わせたが、次の瞬間には弾けるような笑顔で答えてくれた。

「もちろん! 待ってたよ!」

その温かさに、僕は自分が本当に恵まれていることを心から実感した。

今日の集まりは、サークル仲間の飲み会だった。会場に足を踏み入れると、百名を超える学生たちの熱気に圧倒された。

友人たちは「参加費は出すから」と気遣ってくれたが、僕はそれを頑なに拒んだ。店長から託されたあの6000円を、自分の手で支払うことに意味があると思ったからだ。

受け取りを渋る友人に無理やりお金を握らせようとする僕を見て、彼らは「本当に律儀な奴だな」と呆れたように、けれど嬉しそうに笑って受け取ってくれた。

周囲に何度も頭を下げながら、僕は友人たちに導かれるまま、用意された椅子に腰を下ろした。

酒の匂いと喧騒。初めて足を踏み入れる『大学生』としての輪の中で、僕はまだ、場違いな迷子のような心地でいた。