「君が噂の平御幸くんだね?」
東屋さんに名前を呼ばれた瞬間、周囲がざわめきに包まれた。僕が緊張で固まりながら首を縦に振ると、彼は愉快そうに目を細めた。
「純さんから聞いていたよ。いつも机の上に飲食物が山のようになっている面白い子がいるってね」
純さん――いつも僕を気にかけてくれるあの教授のことだ。東屋さんとは親戚にあたるらしい。
「僕にはお金がないので……。周りの友人たちが、ご飯などを恵んでくれるんです」
僕が正直に答えると、東屋さんはさらに踏み込んできた。
「ご飯だけじゃなく、お金を渡してくれる仲間はいなかったのかい?」
「いるにはいたのですが、申し訳なさすぎて全て断ってきました」
「こいつ、お金だけは絶対に受け取らないんですよ」
と、横から友人が苦笑混じりについてくる。
「へえ、お金は受け取らないのに、ご飯は受け取るんだ。どうして?」
東屋さんの射抜くような視線に、僕は自分の信条を口にした。
「お金には期限がありませんが、食べ物には期限があります。僕は貧乏なので、食べないともったいないと感じてしまうんです」
その瞬間、東屋さんは虚を突かれたように目を見開き、次の瞬間には体を震わせて笑い出した。
次回更新は7月28日(火)、20時の予定です。
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