マスター・オブ・サスペンスといわれたヒッチコック、彼は鶏肉屋の息子だが、卵が大の苦手だったとか。道理で彼の作品には、卵が印象的に使われるシークエンスが多い。
傲慢なご婦人を描くのに、彼女が朝食を摂っている場面で、食後の煙草を吸い終わり、それを目玉焼きの黄身で消したのには驚いた。彼女の性格すら表している感があり、流石と感じたものだ。
ドキュメンタリーカメラマンと、超一流ファッション・モデルのカップルの、格差を表す場面も印象深い。カメラマンが己のアパートで、自ら取材した貧困地区での悲惨な食事を語り、暗に僕達は釣り合わないよと伝えているのだが、そこに届くのが、ニューヨークの三ツ星レストランからのデリバリーだ。
フランシス・フォード・コッポラ監督はイタリア系だが、移民の食事を実に上手く表現していた。
ファミリー同士の陰惨な抗争の中、ボディ・ガードが鼻歌交じりで陽気に作る、ミートボール・パスタ。
ドンの退院祝いにふるまわれた、シチリアの郷土料理、チキン・カチャトーラ。
これは、鶏肉のぶつ切りを赤ワインに半日漬け、玉ねぎとマッシュルームとオリーブオイルでじっくり煮たものだ。
そしてカンノーリ。これは、生クリームとフレッシュ・チーズの、パイ包みのデザートだ。このこってりしたデザートが、暗殺の場面で重要な小道具となる。
同じイタリア系の、マーティン・スコセッシ監督は、千八百七十年代のニューヨークの貴族達の生活を、劇中で見事に再現していた。
色とりどりの様々な花々が開く所を、スローモーションで撮り、其処にオーバーラップされるのが、当時のフレンチだ。
鴨を始めとするジビエ。新鮮な海鮮。サラダにスープにシャンパン、食後のキューバ産の葉巻。
しかし一歩外に出ると、舗装すらされていない泥道で、当時の貴族達の欺瞞性を表現していた。
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