次の瞬間、

──バチンッ!

大きな衝撃音が鳴り響いた。

同時に「ぎゃあああ!」という叫び声が、あたり一面に木霊(こだま)した。

なんと蘇摩利の左耳が吹き飛び、鮮血が噴き出していた。

首の頸動脈も截断(せつだん)されたのか赤黒い血が滴(したた)り落ちている。そして、ドンッと下に何かが落ちてきた

──小斧

であった。

又五郎が投げ放った小斧は弧を描き、風下から蘇摩利の首筋を正確にとらえた。滝の音がする岩場に誘い込んだのも、小斧の気配を悟られないための又五郎の冷徹な謀(たばか)りだった。

蘇摩利はくずおれるように高い樹上から落ち、地面に叩きつけられた。

「姉貴! 嘘だろ」

亜摩利は髪をかきむしり動転した。その間に、又五郎は踵を返して走り出した。

「くそ、逃がさんぞ!」

亜摩利は烈火のごとく怒りをあらわにし、追いかけてきた。

武器はいつもの鉄毬ではなく、碁盤の碁石のような黒い玉を握っていた。木から木へ、ものすごい速さで飛び移り、又五郎の行く手を阻むように樹上から黒い玉を投げてきた。

黒い玉は放ると、空中で四方八方(しほうはっぽう)に散弾して爆裂した。

その威力は大きく木の枝ごと吹き飛ばす火薬が仕込まれていた。しかもその爆裂する範囲も広く、六間(十メートル)四方にまで殺傷能力が及ぶものであった。

「どうだ、“鼠籠包(そろんぽう)”の威力を見ろ! 逃げられまいぞ」

木の上から雨霰のように下に向かって投げられたのでは堪(たま)らない。又五郎でさえも前に進めなくなった。しかもここから先の道は、ほとんど枝振りの無い細い幹だけの杉木立の道で、隠れる場所がほとんどない。

「もう袋の鼠だな、冬星! 姉貴の仇(かたき)だ!」

亜摩利はものすごい数の鼠籠包を打ち投げてきた。無数の玉が地面に弾けると、轟音のような爆裂音が鳴り、あたり一面が土煙と硝煙の臭いに包まれた。

 

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