【前回の記事を読む】カードも身分証も入った財布がない!さっきのベンチに猛ダッシュしたが、30分以上経っていて…目にした光景に思わず叫んだ。

第二章 土佐─修行の道場 長い長い道とお接待

23日目 2024年10月11日(金)

小1時間登ったところで川を渡る。橋まで来ると、ガサガサと大きな音がした。野生のイノシシだ。大きく、牙も太くて長い。野生動物を目の当たりにするとこんなに怖いのかと思うほど怖く、足がすくんだ。イノシシは私に気づかず、無心に鼻先で地面をゴソゴソしていたが、しばらくすると山の中に消えていった。私に気づかなくて良かった。

さらに歩き続け、9km‌ ほど進んでやっと遍路小屋に到着。自販機もある。登りの苦手な私だが、今日は足よりメンタルがやられてきた。「ああ、もう登りたくないーっっ!」と、ぼやいて水分補給をしていると、進行方向から下りてくる遍路に出会った。逆打ちで既に4周目だという。楽しい雑談とアドバイスをたっぷりいただいた。

やっと三原村に入った時には、宿を出てから5時間が経っていた。公衆トイレ付きの村の集会所を見つけ、お昼になったので、女将さんが持たせてくれたお弁当を開いた。お弁当は手書きのお手紙とおにぎりが3つ入った立派なもので、1泊2食の料金ではやり過ぎなおもてなしだと恐縮した。

のどかな里山の風景を眺めながら、誰かにお弁当を作ってもらうなんて何年ぶりだろうと思い、ふと母親に会いたくなった。「ママは元気でいるかな……。私がこんなところでおにぎりを齧っているのを見たら何て言うかな」と母の顔を思い出していると、トンビが鳴いて空を舞っていた。今夜にでも母にラインをしてみようと思った。

宿に着くと今日の客は私だけらしい。「連日の疲労が胃に来ています。夕食を軽めにしていただけませんか?」とお願いすると、心底心配そうな顔をされ、野菜を柔らかく料理したものを少量ずつと豆腐と柔らかめに炊いたご飯を少し出してくださった。あまりに優しい対応で泣けてしまった。

「そんな細い身体で、重い荷物担いで。遍路は頑張ったらいかんきね」と心配してくれた。四国の方たちは歩き遍路にどこまでも優しいのだ。

お母さんが日中働いている会社では甘酒を作っているそうで、少しいただいたがなんとも優しい甘味の本当に美味しい甘酒だった。地元の方たちの優しさがそのまま表現されている感じだ。遍路が終わったらお取り寄せしようかと思っている。