【前回の記事を読む】翔「まさか…こんなに低いなんて…」花嫁列車に乗り遅れた花嫁を乗せて、ワゴン車は走るが…
第2話 花嫁を乗せずに花嫁列車が出発?
洋二は、耕太郎からの電話で高子駅北口に淑子が着いたことを聞き、乗車中のみんなに知らせました。ここでは伊達氏発祥の高子城跡地に登って、ご先祖様に結婚の報告をする仕来りがありました。
着物姿で登れる城跡は標高90mあまりで、丹路盤と称され、高子二十境(たかこにじゅっきょう)の1つで伊達氏が治めた地が一望できるのです。淑子は花嫁列車から降りてきた綾奈小路姫子や丈太郎と一緒に山を登りました。途中一度休みましたが頂上からの眺めが素晴らしく、疲れも吹き飛ぶようです。
「城跡北側の断崖から見るとまた違った高さなのね」
奥州伊達家発祥の地で淑子に、誰かがささやきかけてきました。
(かたじけのうござる、淑子姫)
その言葉だけがはっきりと聞き取れましたが、後の言葉は風に消されてしまいました。
「政宗さま」
その言葉を聞いて歴史好きな姫子は得意げに声を出しました。
「伊達家には政宗公が2人いるのよ。9代目の伊達政宗は南北朝が終わりを迎える時代に活躍して、私たちの知る伊達政宗は17代。秀吉や家康の時代に活躍しましたのよ」
淑子も歴史研究会だったので、伊達市の歴史には詳しかったのですが、淑子に語り掛けてきたのは17代伊達政宗のように思いました。
結局登ったのは3人でした。淑子と姫子は丹路盤の崖の上で、長いファゴットケースを背負って立っていましたが、知らない人が見たら不思議に思う光景でした。
「ここに殿様が立って自分の領地を毎日見ていたのかしら」
頂上の丈太郎がリュックの猫と話しながら岩場を歩いています。
「丈太郎、危ないわよ」
淑子がそう言う間もなく、丈太郎が足を滑らせてしまいました。
「あーー」