【前回の記事を読む】招待客リストに入っていない、招かれざる客を見つけた。…振り袖姿のその女性は、新郎の過去のお見合い相手で…
第2話 花嫁を乗せずに花嫁列車が出発?
しばらく考えていましたが、いい方法を思いつき八重子に話します。
「耕太郎に連絡してみます。あいつ、花嫁列車に乗るはずでしたが乗り遅れているんで」
携帯にすぐに出た耕太郎は、慌てて話し出しました。
「どうしよう、渋滞にはまって乗り遅れた」
濱田耕太郎は、淑子の行方不明の母親と野菜ソムリエつながりの知人でした。
洋二との雑談の中で北城河家の父母が共通の友人だとわかり、結婚式のために仕立てられた花嫁列車に乗ることになっていました。
洋二は我が意を得たりとばかり話し始めました。
「ちょうどいい、耕太郎」
「何がちょうどいいんだ、バカにしやがって。どうせ俺は、約束の時間も守れないコンコンチキさ。でもな、お前にちょうどいいなんて言われる筋合いはないぞ」
「いや、そうじゃないんだ。乗り遅れたのがちょうどいいんだ」
「何をー。そこまで俺をバカにするのか。もう頭に来たぞ」
「まあまあ、落ち着いて。実は花嫁が乗っていないんだ」
一瞬の沈黙が2人の間にありました。
「そんなバカな話があるか、主役の花嫁を置いて出発する?」
「詳しいことはわからないが、花嫁列車に花嫁は乗っていない」
耕太郎は冷静になり福島駅東口の駐車場に停めた業務用の車高210cmのワゴン車から、走って数分のJR福島駅併設の阿武隈急行福島駅に着きました。
花嫁列車が出発する直前の待合室には淑子がいました。こげ茶色のファゴットケースを背中から下ろして支えている姿は、まるで武将のような雰囲気でした。