【前回の記事を読む】翔の甘い言葉に淑子は胸の奥が熱くなった。互いの名前をささやきあうと、彼は淑子に接吻した。彼に応えるように、淑子は…
第2話 花嫁を乗せずに花嫁列車が出発?
「さ、行かないと。花嫁列車に置いていかれるよ」と耕太郎。
「乗り遅れた先輩も一緒に乗せてね」
と淑子は翔を見ました。
耕太郎が待合室から出ると、駅長が耳もとでささやきました。
「仙台駅から花嫁列車が丸森駅に向け出発したと連絡がありました」
耕太郎はいささか混乱しました。
「どういうこと、結婚式が2組あるってこと?」
「福島駅発も仙台駅発も依頼主は同じ方のようです」
周囲の注目を集めながら早足で駐車場に着きましたが、淑子が急に立ち止まりました。
「違う、違うわ。ほら、前のタイヤと後ろのタイヤの間がすごーく長くて、中にはシャンパンが置いてある白い車でしょ」
車には緑色で〔野菜・果物コージー〕と書かれ、バンパーやドアには傷や錆がありました。
「いや、まーほんとはね。リムジンと思ったんだけどね」
「じゃあ、リムジンが来るのね。白くて長い車体でハンサムな白い手袋の運転手さんが」
「いや、あの、そのー、豪華送迎車とは言葉のあやで」と耕太郎は言葉に詰まりました。
しかし、列車に乗り遅れたのは淑子が原因のはずと逆襲します。
「こらこら、花嫁だからっていい気になるなよ。淑子っ」
淑子は舌を出して、茶目っ気たっぷりに笑いました。
「いい年したおじさんをからかうのは淑子さん」と耕太郎。
「おやじギャグー」
3人は笑いながらおんぼろワゴン車に乗り込みました。
「どの駅に行けば花嫁列車に追い付くかな」
「そうね、福島駅の次は卸町だけど間に合わないわ。次の福島学院大学前も階段が3階分くらいあるから、次の瀬上駅はどうかしら」
「よし、そうしよう」
耕太郎はカーナビをセットしてハンドルを切りました。