結婚を低いガードが邪魔しているのかと淑子は思いました。
ガード下の道路が盛り上がっているのか、それとも建設当時からかわかりませんが、高さ1.8mの表示があります。耕太郎のおんぼろワゴン車は車高2.1mですから、通り抜けできません。
「何やってんのよ、ボケ。ここからホームまで歩いて4分、いやいやゆっくりとおしとやかに、振袖で歩くから7分は必要よ」
「いやーまさか、こんな低いガードがあるなんて」
耕太郎は嘆きました。
「どうしようもないわね。役立たずのポンコツ」
「淑子、そこまで言うのかい。ちょっとひどくね」
「ナビよ、カーナビに言ったのよ。おじさんは素敵よ、汗臭いけど」
耕太郎はハッとしました。低いガードに冷や汗をかいたことを。
「ナビだよね、そうそうナビが悪い、ポンコツのコンコンチキ」
耕太郎はインパネをたたきますが、電車は駅を出てしまいました。
「淑子どうする? 花嫁列車の運行スケジュールがわからないから、どこに行けばいいか教えてくれないか?」
「そうね、阿武隈川を挟んだ向瀬上駅は駐車場もあって便利だけど、停車時間は長くないの。高子駅では長く停車するはずよ」
「よし、高子駅だね」
「北側には広い駐車場もあるし、近くの山に登るはずよ」
「山にも行くなんてすごいね。花嫁列車」
耕太郎はそう言いながらハンドルを切り、くねくねしたリンゴ畑沿いの道を通り抜け、阿武隈川に架かる月の輪大橋を渡ると、高子沼が見えてきました。秀吉から金山を隠すため谷をせき止めて沼にしたという伝説の歴史ある沼を見て、高子駅北口に到着しました。
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