「マヤタをそんな見せかけだけの先進国にしてしまったのは、日本の責任のようにも思えるけど、エメラルドの人は日本をどう思っているの?」
「日本はマヤタが先進国になる五年以上も前に、このまま経済成長だけを優先させていったら危険だと、ギノフ大統領に何度も警告していたのに聞き入れられなかったので、科学技術者の派遣や日本人の移民を打ち切り、マヤタ支援から手を引いてしまったから、エメラルド国では日本を非難する人はほとんどいないわ。
むしろ、世界トップレベルの優れた技術力を持っている日本が、地球最大の危機を救ってくれるかもしれないと期待しているぐらいよ。それに、ベルガー中尉も言ってたけど、日本人を保護すると、日本政府から食料や水の支援を受けられるから、どのシェルターでも日本人は特別扱いよ」
「そうなの」
ルリエはほっとした半面、地球を未曾有の危機に追い込んだマヤタ人だと自分が疑われていることに強い不安を覚えた。
「あなたのことは決して悪いようにはしないから、心配しないで寝なさい」
看護師は念を押すように言うと、病室を出ていった。
ルリエは目を閉じて眠ろうとしたが、様々なことが頭をよぎって眠れなくなってしまった。
そもそも自分は、なぜこんなところにいるのだろう? 信州の山の家にいたはずなのに、いったいどうしてエメラルドなんて全然知らない国へ来てしまったのだろう?
この国は、なぜ多くのものが緑色なのだろう? そして、緑を食い荒らすデスネヒトとは何なのだろう? どうして日本人である自分が、デスネヒトを大量発生させ、悪魔の手先とまで憎まれているマヤタ人だと疑われなければならないのだろう?
すべてが疑問だらけで、納得できなかった。
いろいろ考えているうちに、自分をかつぐための悪い冗談ではないかと思えてきた。
そうだ、悪い冗談なんだと思って起き上がろうとした途端、激しい頭痛に襲われ、体の節々が痛み始める。ひどい痛みで、とても起き上がることなどできない。ルリエは顔をしかめ、あぶら汗をかいて痛みに耐えていた。