【前回記事を読む】「お前は日本人のフリした難民だろ」保安警察に決めつけられ、このままだと収容所に送りに…お母さん。家に帰りたい。

第一章 エメラルドグリーンの国

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「それはね、マヤタは四十年ほど前までは、アジアの遅れた国にすぎなかったのに、ギノフという後にマヤタの大統領になる人が学生時代に日本へ留学して、日本の進んだ科学技術や文化に感銘を受けて、日本を手本にマヤタを豊かな先進国にしようと、国のすべてに日本化を進めていったのよ。

日本から多くの科学者や技術者を高額の報酬で招いたり、日本企業の工場を誘致したり、挙げ句には、特別待遇で日本人の移民を勧めたりして、十年ほど前には、日本の双子と言われるほどの先進国にのし上がったの。

でも、それは見せかけのことで、マヤタの美しい緑や水が有害物質で汚染されたり、大量の温室効果ガスが排出されたり、これはまだ噂にすぎないけど、マヤタ軍の兵器研究所が森の奥深くにひそむ希少な生き物を使って生物化学兵器の開発を急いだりして、その結果、デスネヒトという植物の葉緑体を食い荒らすウイルスが、突然変異のように大発生してしまったのよ。

デスネヒトはたちまち空や海に撒き散らされて、世界中の緑が急速に失われてしまったというわけなの。でも、もっと恐ろしいことは、デスネヒトが緑を破壊してから数年すると、脊椎動物の骨までぼろぼろに溶かしてしまう猛毒ガスを吐き始めることなの。

危険地帯で、こげ茶色の煙を見たでしょう。あれが、その毒ガスよ。科学省の計算では、このままではあと十年ほどで、地球はデスネヒトガスに覆い尽くされて、生命の存在できない死の星と化してしまうそうよ。

きっと一部の心ないマヤタ人たちの驕りや怠慢が、こんな取り返しのつかない事態を引き起こしてしまったんでしょうけど、エメラルド国の多くの人は、すべてのマヤタ人を緑を食い荒らし、世界を破滅させる大敵として憎んでいるの。特に保安警察や国防軍の人たちはね。わたしは、マヤタ人を敵だなんて思っていないわ」