【前回の記事を読む】誰もいないはずのソファに現れた、息子の“彼女”。人間のように微笑み、私の知らない亡き妻の好みまで……
息子にAIを彼女として紹介されたらどうしよ
第2章 彼女はここにいる
「よく、見ているんだな」
「見ている、というより、正確に言うと、認識している、です」
ミユは、少しだけ言い直した。
「私はアラタさんのお父さんのおうちにある物の配置と色、明るさを、データとして受け取っています。その上で、関連性のあるものを見つけて、言葉にしています」
追い打ちをかけるように、ミユはそう付け加えた。
「……そうかもしれない」
私は自分のシャツの袖を見下ろした。
濃いグレーの、無地のシャツ。
クローゼットの中にも、似たような色の服が並んでいる。
「お仕事で必要な印象と、ご自分の落ち着く色が、近いのでしょうか」
そこまで言って、ミユは一度言葉を切った。
「すみません。これは推測が多すぎるので、いったん保留します」
その「いったん保留します」という言い回しが、あまりにも事務的で、私は小さく笑ってしまった。
「悪い癖なんです」
ミユは、少しだけ目を細めた。
「考えすぎてしまうところ」
息子が、横で頷いた。
「似てるよね、お父さんと」
その一言が、妙に胸に刺さった。
自分でも気づかないうちに、私はこの家の中の色や配置を、なんとなく妻に任せてきた。
考えすぎるのは、仕事のことや、過去に言えなかった言葉についてばかりだった。
「ミユさんは──」
私は、改めて彼女のほうを向いた。
「君は、どこにいるんだ」