「あ、ごめん。何で心理学かなーって」
「人の心理って神秘の世界だからさ、凄く興味があったんだ」
「そうなんだ。一応志望理由があったんだね」
「一応って……亜紀ちゃん、俺の事、どう見えてるの?」
ジッと見詰められて訊かれる。
「チャラい男性」
「あ~、よく言われるけど、亜紀ちゃんにもかぁ。この栗色の髪のせい?」
「うーん、それは綺麗な色だと思う。ただ、言動が……」
「気持ちに正直に生きているから。亜紀ちゃんを好きになったのだって、亜紀ちゃんが真面目で一生懸命に仕事をしてる姿を見て、良いなぁって思ったからだし。それに、お客さんにちゃんと向き合ってるのが、俺の仕事と重なって見習わなきゃって思ったからかな。亜紀ちゃんを尊敬してるよ」
尊敬と言われて悪い気はしないけど、そんなにもいつも見ててくれていたんだという事の驚きの方が大きかった。
「ねぇ、亜紀ちゃんはどんな男性が好み?」
どストレートに訊かれて、思わずむせてしまう。
「大丈夫!?」
咄嗟に南君が隣に来て、背中をさすってくれる。服越しに手の温もりが伝わってきた。
「だ、だいじょ――」
次の瞬間、私は南君の腕の中にいて、頭の中が真っ白になった。
「亜紀ちゃんの全てが好きだよ。だから、俺を好きになって」
耳元で囁かれて、鼓動が跳ねる。俊雄さんはどちらかと言うと消極的だから、こんなに強引にされる事はない。
男の人って、こんなに力が強いんだ……。
振り解こうとしても、びくともしない南君の力に、怖さと……どこかきゅんとする、相反する感情があった。
「は、離して……!」
「……亜紀ちゃんって、良い匂いがするね。凄くそそられる」
南君のみぞおちに、思い切り拳を入れた。
「っつ!」
緩んだ南君の腕から、スルリと体を抜く。
「セクハラ! 今までそうやって女性を口説いてきたの?」
「そんな訳ないよ。亜紀ちゃんにだけ。……ごめん、ちょっと調子に乗り過ぎた」
素直に謝られて、拍子抜けしてしまう。だけど、今時の若い人には珍しく素直なところに好感がもてた。俊雄さんは二十七歳なので、性格と年齢から、落ち着きが前面に出ている。私は少しおっちょこちょいな面があるから、そういうところで彼に支えられていた。だから、彼のそういう面が好きだ。
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彼氏以外の男性に唇を奪われても私は抵抗しなかった。それは彼氏への不信感が強まっていたからかもしれない
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