【前回の記事を読む】都育ちの雅な貴公子の"それ"とはかけ離れ、彼女を羽交い締めにして襲う様は獣のよう。しかし女は、満足げな表情で「かまいませぬ」と返し……
秋。政策
この頃になると、大陸や半島由来の侵略行為を生業とする海賊とは別の、高麗や、遼の両国の使いと称する異国の人物が頻りに大宰府近海へ近づいていた。
大宰府(朝廷)は、如何に漢語で書かれた文書が持ち込まれ様とも、正統な大陸の使者は〝宋〟と決めていたので、それ以外の使者が持ち込む文書に対する扱いは、如何に礼が尽くされた文面であっても、比較すると粗雑であった。
唯、勿論、文面内容に依っては、非礼だったり、可笑しな文体であったとしても、この様な、状況が続くことは、『余り宜しくは無い』と高明は、判断していた。
彼らの〝侵入(侵略)〟の可能性は、〝低くはない〟という判断の下、沿岸の警備を強化する必要性を真剣に感じ始めていた。また、この高麗の使者の持ち込んだ文面の内、彼の地の、近海を荒らす〝倭寇〟の取り締まり依頼だけは、早晩、看過出来ない状況になるとも、踏んでいた。
この考え方は、種材だけではなく、東シナ海(玄海の海)に面する地域の豪族を含む各位全てに、大宰府の権帥の下命という形で、共有され始めていた。
この頃の倭寇は、九州北部の出身者ではなく、奄美や琉球出身者が主体であった事も、元々、甘い汁の吸い方を知っていた、元倭寇である、東シナ海(玄海の海)に面する地域の豪族を含む関係者全てにとって、面白くは無い事態であった。
この状況や、それに伴う大宰府権帥と言う立場から、自身の見解は、高麗や遼に地理的にも近い、隠岐に流されていた、藤原千晴や対馬の司である国主長峰某にも、伝えておく必要があると高明は考え、文を認めていた。
唯、これを彼等に届ける適任者の人選に悩んでいた。
海の人間となると、現時点では藤原純友由縁の人物しか思い浮かばなかった。
その様に思い悩んでいた高明の下に、種材が『ご相談したき儀が御座います』とやって来た。
「その方、船は、佳(よ)く為るのか?」
開口一番、彼が質問を発する前に、高明は、種材に質した。