「如何にも」

船は、この地に住む、下級の大宰府現地官人にとって、馬を扱うよりも簡単であった。

「ほう、して隠岐や対馬には、此処から直に往けるのか?」

「容易き事で、隠岐ならば、この時期風の具合もございますが、巧く行けば一日で、届きまする」

「左様か、岩見に行かぬでも構わぬか」

高明は、一人は、この男を使えば〝佳(よ)い〟と判断した。

「しかし如何なる御所存で?」

種材は、高明の質問の意味が分からなかった。

「構わぬ、その方が、理由(わけ)を知る必要もない」

高明の答えは、つれなかったが、故に、それ以上の質問は、控えるべき。と彼は、判断し、自身が此処へ罷り越した用件を話し始めた。

「実は、ご嫡子殿の件でございますが」

「忠賢が、何ぞしたか?」

高明は、種材の質問の意図が、図り兼ねた。

「はっ、沿岸の警護所の纏めとして」

と言い掛けた処、

「愚か者!」

と、一喝が下った。