【前回記事を読む】30代上司は、他人から見下されることに過敏。派遣社員の私に“分際”をわきまえさせるため、妙な熱意を発揮し…

第一章 幸せなおじさんたちの罪
―崩壊する「科学技術立国」の現場

必敗の大企業文化

非正規の若い部下がよく働く一方で、居室で時間を持て余しているのが明らかなV氏に心の余裕がないのは奇妙な情景だった。

O氏が臨時でリーダーを務めていた頃に私が無理を重ねたおかげでチームはY社で最初から稼げる態勢にあり、V氏は恵まれた立場にあったが、それでも彼は時間的なゆとりを心のゆとりにはできなかった。

すでに動いている仕事を潰すほどの妄動を始めないだけP氏よりは自制心があると認めようと思っても、会議の場で存在感を発揮すべく彼が声を張り上げているのを聞くと、私はその動機を察して気が重くなった。

大きな組織で生き残っていくことを望んでいる彼にとって上の人がいる場での演技は極めて重要であるらしく、役目を果たしている印象を与えるために彼は大真面目な形相で虚勢を張っていた。

名声を求めて妄動に走るマッチポンプ型のP氏が火遊びをして火を消しそこねた人、私が火の粉をかぶりながら実際の消火を担当した人だとすれば、V氏は現場から離れた場所でハシゴに乗り、出初め式のパフォーマンスをして役目を果たした気になれる人であった。

大真面目であっても彼の振る舞いはどこか滑稽であり、本気で嫌悪感を示す人だけでなく、笑って済ませている人も社員のなかには少なくなかった。