視界が、一瞬暗くなった。
すぐに、薄いワイヤーフレームのような線が目の前に浮かび上がる。
見慣れないロゴと、小さなアイコン。
それらが、息子の声に合わせて、ぱちん、と弾けるように消えた。
「──こんにちは」
その声は、右の少し上から聞こえた。
視線をそちらに向ける前に、私は息を止めていた。
心臓の鼓動が、耳の内側でうるさく響く。
ゆっくりと顔を上げる。
リビングの、空いていた一人掛けのソファに、彼女は座っていた。
年齢は、二十代の前半くらいに見える。
髪は肩にかかる程度の長さで、柔らかく波打っている。色は黒に近い茶色だが、光の角度によっては、少しだけ青みがかって見えた。
淡いベージュのワンピースに、白いカーディガン。
雑誌の中から抜け出してきたような服装なのに、不思議とこの安い合皮のソファと、量販店で買ったラグの上に、違和感なく収まっている。
だが、もっとも違和感がなかったのは、その顔だった。
「はじめまして。アラタさんのお父さん、ですよね」
彼女は、私の名前ではなく、立場を呼んだ。
「アラタさんのお父さん。お話しできて、うれしいです」
口の動きと声が、きちんと合っている。
目の動きも自然だ。
まばたきの間隔が均一すぎることに気づくまでは、人間だと言われても納得してしまいそうだった。
「……はじめまして」