【前回記事を読む】「業績不振でアセットを増やせない」と嘆く彼に、適当なことを喋っていたら信用がないのは仕方ないと伝えると、彼は黙って立ち去った
3. Cerro Colorado(チリ銅山開発)プロジェクト案件
その晩遅くにクリスから電話があり、「申し訳ない」とのお詫びで始まり、「Last resort(最終手段)として、(クリスも)個人的に親しいジョン・リード会長に直談判して突破口を見つけるしかない」との結論で合意して、電話を切った。
翌朝、支店長席に行って事情を説明し、CITIを説得するに十分な材料はある旨、あれこれまくし立てたことを覚えている。
支店長からは、その前のM物産の化学プラントのプロジェクトの件で、細かい事情も知らされないまま何時の間にか何も無かった様に落ち着いてしまったことの一件を蒸し返されて嫌味を言われ、一方で、昨晩クリスに言った言葉が自分に戻って来る罰を感じつつ、今度は開き直ってM物産との顧客関係の大切さや、MITI のお墨付きと言った大義名分を振りかざして、支店長にお出ましを請うた。
時の支店長はHd氏で、後に副頭取になって、その後の案件等でも色々と助けて頂くことになる。
人事考課上は良い点は付けてはもらえ無かった様だが、個人としては信頼して頂いている様に思えた。
M 物産担当の当行内営業部の応援を得て、Hd取締役支店長にお出ましをご承諾頂いた。支店長席の電話からクリスに連絡し、ジョン・リード会長のアポ入れを図ると、保留にしていたその電話の間口に、「今なら会える」との返事があった。
頭を刀で切り落とされた様なミッドタウンにあるCITIの本社ビルまで、自分達のオフィスのあるダウンタウンからは 20 分程度あれば着くだろうか? 30分後に伺う旨のアポを確定した上で地下駐車場から支店長車を上げる時間を惜しんで、ワールドトレードセンター前で、イエローキャブを拾い、CITIへと向かった。
車中で、説得する理由を箇条書きに汚い字で紙に落とし、お渡しするのがせいぜいであったが、禿げ頭の日本人の流暢で整然としたプレゼンに、若々しく見える金髪の米人はひとつひとつ頷きながら聴いていた。
“I understand what you are saying. Let me think about,and get back to you.”(あなた方が言っていることは分かった。考えてまた連絡します)と簡単に答え、機動的に訪問してくれたことに謝意を示しつつ、CITIの社用車で、ワールドトレードセンターまで送ってくれた。
往復1時間にも満たなかった面談ではあったが、同席していたクリスの表情から、悪い結果にはならないであろうことは読み取れた。
Hd支店長に頭を下げて、席に戻り、昼食を Au bon Painに買いに行こうかと思案しているところに、クリスより電話が入った。