【前回記事を読む】仕事の詳細は上司にも話せない——「もう君は、お客さんの前に出せないな」と呟かれた。その後、上司は昇進したが…
3. Cerro Colorado(チリ銅山開発)プロジェクト案件
今私が胸に差して日頃使っているモンブランのボールペンには“Cerro Colorado-1992 USD100 MM Project Finance”と金色に刻印された文字が薄く残っている。
1990年代初頭の米金融機関は疲弊していた。日本でもバブルは弾け、経済はピークを越えていたが、不良債権が問題化するのはその5~6年後で、日系金融機関はまだまだ元気な頃であった。
当時の米国では Purpa(Public Utility Regulatory Policy Act)法なるものが施行され、電力自由化を背景に独立電力供給会社(IPP:Independent Power Producer)のプロジェクトが盛んに立ち上がっていた。
そこへのノンリコースベースのプロジェクトファイナンスに欧州系の銀行と共に、日系の銀行も存在感を出していた。
IPPプロジェクトに積極的であった M商社や、タービンを自身で提供しつつ、同時にメザニンファイナンスを子会社のGECCを通じて供与していたGEとも親しかったF銀行は、幾つかの大型案件でAgentとしての役割を発揮し、その世界ではグローバルでトップ行の一つであった。
ただ、発電案件だけではもの足りないので、化学プラント、精錬所案件、珍しくは、スペースシャトルの実験棟へのファイナンスも手掛ける中、CITIの友人より面白い話が持ち込まれた。
彼等の取引先、カナダのRio Algom社(リオアルゴム社)がチリの銅山開発の計画を持っているらしい。どうも日本の商社が産出物の引取手として興味を示しているとも。チリといえば世界でもトップクラスの鉱物資源埋蔵国であり、特に銅の生産量は世界有数である。
早速ミッドタウンのCITI本店の会議室から同社の財務責任者と、タコ足と呼ばれるPolycomの機器を使った電話会議ができる回線で話をしてみると、少しはぐらかされながらも、チリ政府からの開発許可が下りたこと、現地でバイオリーチング法により純度の高いSxEwカソードの生産まで行うこと、更には、どうやらその製品引取に興味を示しているのはM物産らしい、との感触を得ることができた。望むらくは、リスク軽減のために、引取に加えて出資も少しばかり一緒にしてほしいとのことも。
早速、本店営業部のM物産担当に連絡して、同社財務部のプロジェクトファイナンス担当に鎌掛けをしてもらったところ、反応は鈍く、有益な情報は取れず仕舞いであった。それもそのはずである。