【前回記事を読む】「自分の権限逸脱がバレたら俺はクビだ!! 事件として報道されでもしたら…!!」怒号は室外に漏れていて…

2. Global Octane(ガソリン添加物)プロジェクト案件

最後迄反対していたD Bankの担当者ジョンより、そんな時に電話が入ったと、秘書が私を呼びに来た(1)。スポンサー社の担当部長の来訪するタイミングをジョンには知らせておいたからかもしれない。席に戻り受話器を取ると、

「自分達は苦渋の決断をする。貴行の提案を受け容れる」との短いフレーズを穏やかに伝えただけで、相手は電話を切った。

間もなく、文書デリバリーサービスで、私の手元へ承諾書が届いた。応接には未だ来訪した4人を待たせてあった。

応接室から出て来た私を認めた誰かが伝えたのであろう。支店長以下副支店長、営業部長、担当者が、席に押しかけ、「一体何が起きているのか?」と、詰め寄って来た。当惑しつつも、説明する訳にもいかず、

「全て丸く収めるので、安心して下さい」とだけ答えるしかなく、

「待たせてあるので」と振り切って、応接に戻った。朝の便で着いていたはずなので、既に4時間は経っていたであろうか。ドアを開けると、時差も疲れも怒りに隠された4つの顔が一斉にこちらに向けられた。が、発言は無かった。きっと、何か緩んだ空気を感じたのであろう。

「時間も時間なので、昼用に何か用意しましょうか?」と切り出すと、素直に応じて、ケータリングでサンドウィッチを頼むこととした。

秘書が新しく落としてくれたCoffeeをすすりながら、米人の担当者より説明をさせた。淹れたての香りが穏やかな息づかいで漂って来たせいもあったのか、室内の張り詰めていたものが次第に緩むのを感じながら、D Bank担当者の配慮を想い、こみあげるものを抑えるのに精一杯でもあった。

説明が終わったところで、届いたConsent letter(同意書)をテーブルの上に置き示すと、暫し4人はそこに身を屈めながら一字一句確かめていた。私は応接室の電話器からエリックに電話を掛け、コトの顛末を伝え、銀行団への説明と報告の Documents(文書)を準備するべく依頼した。電話口からは、何時もの高笑いと

“We made it, Congratulations!!”との声が響いて来た。