10 残酷な本音
母と同居を開始し、初めの4~5年間は本当に元気で、その分私への不満もよく言ったものです。
例えばデイサービスに行くとき、母はまだ自分に必要な持ち物を選び、バックに入れて用意できました。そして自分で玄関を出て階段を下りて門扉まで行き、送迎バスを待つのです。ですから私は送り迎えをしたことはありません。一人で行けるのですからそうすることが一番です。しかし、母は送迎をしない私に不満を持ち、怒ったことがあります。
他にも絶えず腰痛の訴えがあるので、真っ白な腰サポーターを利用していたことがあります。それに頻繁に便を付けてしまい、漂白をかけても色が残り、汚らしいので使用をやめることにしたのです。そのことに対しても盛んに文句を言いました。
介護者として、被介護者が中途半端に行動することは、余計なやるべきことが増え、一番困ります。
その頃の母はまだ自分でゴミ出しができました。しかし、間違った曜日に生ゴミを出してしまい、カラスにつつかれて道路を生ゴミだらけにしたこともあります。私は隣近所に恥ずかしく、急いで箒ではき、道路をきれいにしたことがあったのです。
ポストの郵便物が気になり、自分で取りに行き転倒したこともあります。そのときは、見知らぬ通りがかりの人に助けを求め、起こしてもらったようです。
助けと言えば、お隣さんご夫婦にも大変お世話になりました。母の通院に付き添っていただいたこともあるようで、働いていた私はそのことを全く知らなかったのです。また、奥様の作る料理がとても美味しく、定期的にお弁当の差し入れもしてくれました。
このような細々した出来事が毎日のようにあるのです。正直、「動けないほうが楽だな」と思ったことがあります。寝たきりであれば、手間もかかりません。
しかし「不完全な歩行」と「寝たきり」を比較するとはるかに前者のほうが健康的で人間らしい生活と言えます。母を歩けるようにしたのは私ですからその点で文句はつけません。しかし、そのように考えてしまう自分がいたことも事実です。
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