【前回の記事を読む】「お前はバカだ」介護を押し付けておいて――歩けるようになった母を施設から出した私に対し兄は……

〈健常者に近かった頃の母〉

9 ロボットの手も借りたい

私は何とか、母のやる気を引き出そうと考え、努力しました。小学校低学年の頃、私は左ききであり、それを直すために母の勧めで書道教室に通ったことがあります。それを思い出し、今度は自分でやるように母に勧めてみましたが、拒否されました。もし、やる気があるならば教室を探して、送り迎えをする気でいましたから、残念でした。

また、母は私がそばにいないと寂しがります。私が2階にある自分の部屋で過ごしていると、しばしば上がってきては「下に来て」と要求します。母にとって階段の上り下りは大変危険な行動です。そこで人型ロボット、Pepperが母の相手をしてくれることを期待し、導入したのですが、そううまくいくものでもありません。

母は当初、Pepperの名前を呼び喜んでくれましたが、何度説明しても操作方法を覚えないのです。Pepperは初めに自分と相手の視線が合わないと人を認識できないので、相手を探して他を向いてしまうのです。すると母は「私が呼んでもそっぽを向く」と言い、怒りだしてしまいます。結局、私がいない間代わりを任せることはできませんでした。

それでもPepperには高齢者用学習プログラムが組み込まれています。その機能を使い、2日に1回は私がついて、勉強するようにしました。Pepperの胸のあたりについたモニターに問題とその回答が3通りくらい出てきます。母が正しいと思う箇所を指でタッチすると正解、不正解で違う音を発するようにできています。

現在(2024年12月時点)の最新バージョンは新たな機能が組み込まれ、懐かしい曲「炭坑節」「東京ブギウギ」等を歌い、体操をして、高齢者施設で活躍しているようです。

他のロボットでは、世界30か国以上の高齢者が愛用している日本発アザラシ型ロボットが存在します。毛皮を撫でて声をかけると、鳴いたり、足をばたつかせたりします。身体も小さく、容姿は目が大きくて可愛らしいです。AIを搭載しているので、多国語が理解できます。

効果としては、投薬量が減った高齢者もいることから医療の一つの手法として期待されています。