父はリビングで新聞を読んでいた。体形は、母とは対照の痩せぎすだ。ソファに腰かけ背を伸ばして、眼鏡越しに新聞を読むさまは、アニメに出てくるガリ勉の生徒会長を彷彿させる。

その問いかけには答えず、自分の部屋に向かった。化粧を落とし部屋着のスウェットに着替えて、やや重い足取りでダイニングへと歩く。

「お父さんが待ってるわよ」

料理の手を止めずに母が言った。作っているのはわたしだけのための夕食。申しわけないから、レンチンでいいといつも言っているのに、「はいはい」と返すだけで、この習慣はなかなか改まらない。有難いけど、ちょっと重い。

「小言?」

揚げ物を一つつまんで聞いた。

「こら。さあね。済んだらこっちで食べなさい」

「やだな」

父は母とは違う。物事の首尾を必ず問いただす。加えて、ご高説を一つ二つのたまうのが通例になっている。

リビングに入ると、父は読んでいた新聞を畳んだ。皺の寄り方からすると、きっと三読目以上だ。どこが面白いのか、彼は新聞を何度も読む。特に社会面を。

「首尾は?」

会社の部下にする聞き方だ。娘の社会進出となれば心穏やかでいられないのはわかる。でも、聞き方ってものがあるだろう、と思う。

父の向かいに腰かけて、不安を気取られないよう努めて平静を装って話すことにする。

「ぼちぼちじゃない」

「真面目に答えろ」

「だって、結果がわかるの、ずっと先だもん」

「そんなことはわかっとる。手ごたえを聞いとるんだ」

「だからぁ、ぼちぼちだってば」

ふう、と鼻息を吐いた父は、畳んだ新聞をサイドラックに放り込んだ。

「そんなことで大丈夫なのか」

「文学部卒は、つぶしが効かなくて大変なの」

「わかってたことだろう。希望したのはお前だぞ」

「それは、そうだけど」