「遥香、今どんな気持ちなんだろう。きっと僕が遥香を訪ねたことはもう耳に入っているだろうし、やっぱり会いたくないのかな」

「まあ、女心は複雑だからね。はいこれ」

明里さんはすでに大量に買ったのであろうお土産のいくつかを開けていた。

「いっぱい買ったんだね」

「旅行だからね」

「なるほど」

「こういうのは、後で後悔しないようにするのが一番なんだよ」

明里さんは、お土産の袋を漁りながら言った。

「今買っておかないと後悔すると思ったから、たくさん買ったんだ。優くんも同じだよ。今日はいつもよりいい顔つきをしてる。きっとどんな結果になっても後悔することがないように行動できたんだね」

ぼんやりと今日のことを思い返す。人によっては、もっとここを踏み込めたのではないかと指摘する人もいるかもしれないが、僕にしては上出来だと思う。実際、由紀子さんは最初に会ったときよりも、わずかながら感情に変化を見せたように思う。

「それなら大丈夫だね。まずは帰ってお祝いをして、次のチャンスが訪れることを期待しよう」

「お祝いってなにするの?」

「お祝いはお寿司だよ。昔からそう決まってるの」

「それ、誰が決めたの?」

「法律で決まってるよ」

なんの悪気も企みもない表情で、明里さんは嘘をつく。そういう彼女の冗談に、僕はやはり救われるのだ。きっと僕一人だったら、落ち込んだまま歩いていたことだろう。

夕日に照らされ、二人の影が徐々に伸びていく。こういう帰り道はとても懐かしい。

次回更新は6月30日(火)、11時の予定です。

 

👉『僕が奪ったきみの時間は』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】夫の不倫現場に遭遇し、別れを切り出した夜…。「やめて!」 夫は人が変わったように無理やりキスをし、パジャマを脱がしてきて…

【注目記事】「いじわる…しないで下さい」…背中のフックを外され、左右とも指でなぞられた。口に含まれ舌で転がされると声が出てしまい…

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp