昭和十六年(1941年)十二月八日 夕食後、大森の下宿も日本中の各家庭の如く大変だった。支那事変の勇士、味岡軍曹は言った、「日本はさすがに神国です。この真珠湾攻撃の成功は神風です。これで日本は完全に勝てます…」
永井工学士は言った、「困った戦争を始めたものですね。工作機械を作る工作精密機械は皆輸入品で、あと二年もすれば使えなくなるんですよ、日本ではできませんよ。毎年二億円ずつ輸入していたんですよ、どうやって戦争を継続するのでしょう」
久保田工学得業士は言った、「僕は電機屋ですが、電気方面でも同じことが言えます。清水さん、あんたは農林省勤めですが、食料はどうですか?」
「悲観すべきものとしか申し上げられません」
支那事変の勇士を除く数名の人たちは、日本必敗の確信を深めてしまった。私は官吏として日本は食料が二割不足すること、南方から輸送しようにも、世界三位を誇る六○○万トンの船が陸軍に抑えられていることを、口外できないことが悔しかった。
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