二つの情報処理回路

どうしてヘビと同じく、怒り顔の表情は素早く認識されるのか?

対象物の認識が当事者の生死にかかわるものだから。これは一つの回答であるものの、それはこういう認識の仕方が「どうして進化したか」という観点からの問いに対する答えであって、他にも回答の仕方は存在する。

具体的に、私たちのからだの中の、どういうメカニズムで素早く処理されるのかというふうに置き換えることだって可能なはずだ。そして、その問いへの答えとなる事実もつまびらかにされてきている。

それを図示したのが、図1-3である。他者の感情を認識する機能を果たしている脳領域は、扁桃体と呼ばれているが、要は、怒り顔と笑い顔では眼から入ったのちの情報の処理回路がそこまでの間で異なるのである。怒り顔の情報が処理される回路が、太い矢印、笑い顔の回路が細い矢印で示されている。

いろいろ耳慣れない脳の部位の名称が並んでいると思われたかもしれない。名前は、どうでもいい。

大事なのは、怒り顔が入っていく脳の部位である上丘、視床部というのはいずれも脳の非常に奥に存在する組織であるということ。一方、笑い顔が入っていく外側膝状体と視覚野は脳の表層の組織だという事実を理解していただきたい。最終的に到達する部位は、同じ扁桃体という所なのだけれども経由する箇所が異なるのだ。

写真を拡大 図1-3 怒り顔と笑い顔の情報処理の経路の違い。
太い矢印は怒り顔が情報処理される回路、細い矢印は笑い顔の場合の情報処理回路を表す。
眼から入った怒り顔の情報は、上丘→視床部→扁桃体という脳の奥にある組織を経由する(皮質下回路)。一方、笑い顔の場合は外側膝状体→視覚野→扁桃体と、脳の表層を経由(皮質回路)し、皮質下回路に比べ処理に時間がかかる。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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