配達
配達という言葉を聞いて、何を連想するだろうか。
新聞配達、牛乳配達、あるいは郵便配達。さかのぼればハードボイルド作家ジェイムズ・M・ケインの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』は、別段郵便配達が出てくるわけではなかったが、世に一石を投じた小説であり、映画化されて話題を呼んだ。
現代の世の中では、宅配が便利に利用され、どこへ行くにも手ぶらで行かれるようになった。重い荷物は先に送ってしまえばいいし、お土産も重ければ宅配で送れば身軽だ。
昔、清酒がまだ樽に入れられて小売屋さんの店頭を飾っていた頃は、造り酒屋から荷馬車で出荷されていった。
専属の馬方がいて、馬は定期的に同じ道をたどってお得意さまへ酒樽を届ける。おかげで馬方が居眠りしていても、お得意さんの前に来ると馬がちゃんと止まってくれたという。
それが大正時代になると、リヤカーのような車が登場して、自転車で酒樽が運ばれるようになる。
古い写真を見ると、ハンチング帽をかぶった若い配達夫が誇らしげに自転車にまたがっている。そんな時代もまた自動車に取って代わられる。
前輪は普通のタイヤながら後輪は大八車そのままという、不思議な自動車の写真もある。重い荷物に耐えられるだけのタイヤがなかった時代の産物。
いずれにせよ、商品を消費者へ届けるのが配達の仕事。生産者と消費者とを結ぶ大切な仕事でもある。
(二〇〇七・十)
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