【前回記事を読む】青いバラは、あり得ないもの・不可能の例えだった。本来バラは青色の色素を持ちえないからだ。しかし2009年には…
第二章 洋の東西
旨味
最近、外国人の観光客が多くなった。
松本城の周辺では、いかにも欧米人らしい大柄で髪の色が黒くない旅行者が、大きな荷物を持って歩いている。
そうかと思うと、見た目は日本人と変わりないが、言葉から中国系のアジア人であったりする。
日本食がユネスコの無形文化遺産に登録されてから、外国人も日本の食べ物に大いに関心を持ち始めた。
それが追い風となって、日本酒にも目が向き始めたらしい。
ふらりと外国人が酒蔵にやってきて、見学のあとお酒を試飲する。いろいろ味をみながら感想を述べたあと、この中でお燗して飲むなら、どれがよいか、などと質問してくる。
吟醸酒タイプの香り豊かなものは、その香りを楽しむ意味で冷やして飲むのをおすすめする。
一般酒といわれる昔ながらの普通酒や本醸造酒なら、食事の間に飲むものとして、お燗もおすすめする。
とはいえ、原則は飲む人の好みで冷温でも常温でも、好きなように飲んでもらえればよいが、同じお酒でも温度帯によって顔つきが変わるので、楽しみ方も広がる。
食べるものとの相性もある。冷たいお刺身と燗酒の相性が絶妙な場合もあれば、揚げたての天婦羅ときりりと冷やした純米酒なども、相乗効果で料理もお酒もお互いを引き立てる。
今や料理人の間でも、出汁(だし)、旨味(うまみ)といった日本食ならではの言葉は、英語でもdashi、umamiといわれる。
日本人の味覚の繊細さと食文化が、高く評価されている。
(二〇一五・五)
洋の東西を問わない
二〇一八年から二〇一九年にかけ、日本を訪れる外国人観光客、いわゆるインバウンドは三一〇〇万人を超えた。
その後も増加の一途をたどっている。
松本城の近辺では、外国人の姿を見ない日はなかった。見た目だけではわからないアジア人も含め、見るからに日本人ではないとわかる金髪碧眼、あるいはエクストララージ・サイズのシャツを着た男性、もしくはまだ肌寒いというのに半袖Tシャツで平気な顔をしている若者。
年々増加している背景には、政府のビジット・ジャパン事業の成果もあろうが、日本の治安のよさ、四季折々の美しい風景、特異な伝統と歴史など魅力がたくさんあり、インターネットを通じて情報が手軽に入手できるからだろう。
欧米人は、年齢にもよるが、得てして体力があるので、長い距離を平気で歩く。
あるいは自転車で移動することに抵抗がない。松本駅から直線で四キロメートルほどの道のりを、徒歩か無料の貸自転車で来る人も多い。
中には、距離にして三十キロメートルはある、わさび農場から自転車で来たとか、昨日は中山道を歩いてきたとか、信じられない行動範囲を持ち前の体力で楽しんでいる。