酒蔵の前の道が塩の道「千国(ちくに)街道」であり、天保十三年と刻まれた道祖神もある。
藤森吉弥作の花嫁花婿の祝言像で、盃と提(ひさげ)を持っている。
子供らがお祭りをして毎年色を塗り替える風習が伝わっていて、その来歴を説明すると、外国人はフムフムと耳を傾ける。
「ところで、もし独身でしたら、触るとご利益がありますよ」というと、みな嬉しそうに石に触っていく。
お年寄りがふざけた様子で歩み寄り、周囲の人からやんややんやの喝さいを浴びる。
あるいは「既婚者の私が触ったら、どうなるか?」などと手を伸ばし、奥さんにぐいと引っ張り戻される、お茶目な亭主族もいる。周囲には笑いの渦が巻く。いずれも男女の恋愛話となると、洋の東西関係なく、みなが笑顔になり、その場がほぐれる。
同じ効果は、清酒の試飲の場面。
だれもが楽しそうに味わい、それぞれ感想を述べ合い、場が盛り上がる。
「カンパーイ」などと杯を挙げて、笑顔で記念撮影が始まる。
おそらくその日の夕食に、日本食とともに日本酒が話題に上ることは間違いない。
(二〇一九・五)
第三章 夢を醸す
樽と桶
お祝い事では鏡開きをする。四斗樽の蓋を木槌で大きな掛け声とともに叩き割る。
安房トンネルが貫通したとき、工事関係者が岐阜県側と長野県側からそれぞれの地酒の四斗樽を用意し、貫通とともに鏡開きをして祝ったという。
当時アルプス正宗の四斗樽の注文をいただき、納めたあとで貫通のお祝いに使ったと知らされた。
四斗といえば、一升瓶四十本分。これだけの量を飲み干す祝宴も少なくなって、最近は注文もまれになってしまった。
上げ底で中身は二十本とか、十本分だけでよい、などといわれる場合もある。
車社会だから仕方がないが、清酒を造っている側からすると寂しいかぎりだ。
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