【前回記事を読む】「表か裏か」――人にも二つの顔があるかもしれない。しかし、そのコインは表だろうが裏だろうが、一枚は一枚の価値しかない。
第二章 洋の東西
ファーストレディー
アメリカ合衆国第四十四代大統領に、バラク・オバマ氏が就任した。
白人以外の大統領が出たのは、アメリカの歴史始まって以来のことであり、二百万人とも二百五十万人ともいう人がホワイトハウス前を埋め尽くした。テレビの前で就任の模様を見守った人も、世界中に大勢いたことだろう。
歴代の大統領は、ミスター・プレジデントと呼ばれ、退任後もそう呼ばれ続ける。カーター、ブッシュ、クリントン、小ブッシュのミスター・プレジデントらが列席する中で、アフリカ系アメリカ人の大統領が誕生する様子は、アメリカの歴史の曲がり角を象徴しているように思えた。
大統領夫人はファーストレディーと呼ばれる。一八四九年あたりから使用された言葉だという。ちなみに、セカンドレディーは副大統領夫人を指す。ミッシェル夫人こそ、アメリカの歴史上初の黒人ファーストレディーだ。
ホワイトハウス内に専用の執務室があるというが、報酬は支払われず、大統領に万一の場合があっても、権限の継承順位には登場しない。が、夫たる大統領を支える妻の役割以上に、アメリカという国を代表するファーストレディーとしての責務も大きい。
百年に一度の世界規模の厳しい経済情勢を、どう乗り切るか。就任演説を聴く聴衆の期待は大きく膨らむばかり。しばらくは期待とともに大統領夫妻のお手並み拝見といこう。
(二〇〇九・一)