3 リン酸の働き

リン酸をうまく効かせるのは難しい

県知事賞を受賞後、七年程で普通の柿にもどってしまったのはなぜか?「リン酸をうまく効かせるのは難しい」と昔から言われているが、正にこのことが理由であったのだ。気付くのに三十年近くかかってしまった。それではどのように難しいのか、私なりに探ってみた。

第一に、土壌のpHによって、リン酸の溶解度が変わるということである。土壌中のリン酸は、中性付近で溶け易く、酸性が強くなるにつれて、溶けにくくなるとされている。最近の柿畑は、ほとんどが熟畑化しており、pHは中性付近になっている。したがって、リン酸の過剰吸収が危惧される。

第二に、土壌中の環境が好気性であれば、リン酸は放出されにくく、嫌気性であれば、水中に放出され易いという性質があることである。生育後期に大量の雨が降ると、土壌中が嫌気性になり、リン酸の過剰吸収が心配される。

第三は菌根菌の存在が、リン酸の吸収を助長してくれるということだ。リン酸は、特に土壌中の移動速度が遅いため、動くことのできない植物は、根に接した部分からしか吸収できない。この時菌根菌が共生していれば、土壌中のより広い範囲から菌糸を通してリン酸を吸収できる。ただし、リン酸の化学肥料を施すと、共生関係が崩れ、リン酸が吸収されにくくなる。

以上のように、三つの条件が入り混じると、植物にとって理想的な条件を整えにくく、表題のような表現になったものと思われる。

リン酸とデンプンの関係

リン酸は、柿栽培において、実の大きさや質に、シャープでしかも直接影響を及ぼすから、大変重要な栄養素である。光合成によって作られたブドウ糖は、葉の葉緑体で一時的にデンプンとして貯えられる。

そして、その後デンプンは、吸収のエネルギー源として使われたり、植物体内を移動して果実や茎、根など必要な所に貯えられる。デンプンは澱粉と書き、字のとおり、沈澱する粉であり、水には溶けないので、植物体内を移動できない。

そこで、大変大きな分子であるデンプンは小さく分解して、ブドウ糖などの小さな分子にする必要がある。そして、この時活躍するのがリン酸なのだ。又、リン酸は、分解だけではなく、逆の反応である合成にも使われ、その時果実等に貯えられることになる。

 

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