【前回の記事を読む】木を丈夫に育ててきたことに自信があった私は、土壌のpHを下げるために薬品を散布した。2年後、見事に失敗した――
第一章「柿」栽培への新たな挑戦
2 無肥料栽培への挑戦
土壌pHの適合性と失敗
さて、その後わかったのだが露地畑のpHを急に下げるには、硫黄華を撒くという方法があるようだ。硫黄華とは、蒸気が冷えて固まった粉で、天然温泉の噴出口等で見られる。
土質によって異なるが、粘土質では、pHを一・〇下げるのに十アール当り八十キログラム必要とされている。肥料と同じぐらいの量なので可能な範囲だ。
しかし、pHを上げる原因となった石灰苦土が既に十分に入っており、それを中和する形で硫黄華を入れるわけだが、果してそれで良いのか心配になってしまう。
大量の化学物質がどんどん溜まっていくと、とり敢えずは安定な形であった物質が何らかの機会に不安定化し、悪役になるかもしれない。だからこの方法は、諦めることにした。
さて、土壌中のpHは、養分の吸収や土壌中の微生物の働きに大きく関係しており、最終的には作物が健全に育つかどうかに係わってくる重要な指標である。
例えば、pHが酸性に傾くと、アルミニウムは溶け出し、リン酸と結合してしまうため、作物はリン酸を吸収しにくくなってしまう。
逆に、アルカリに傾くと、マンガンやホウ素等の微量要素は溶けにくくなり欠乏し易くなる。そして、その結果、病害虫を呼ぶことになりかねない。
多くの作物は、pH六・〇~六・五の微酸性を好み、高すぎても低すぎても生育は悪くなる。作物のそれぞれの特性もあるが、pHによって土壌中の肥料成分の溶け方が変わるのが原因と考えられる。
柿の適正pH値は、五・五~六・五とされており若干低くても良いようだが、五・五より下回らないように気を付ける必要がある。
土壌pHが五・五以下になると、特にリン酸や窒素が溶けにくくなり生育が悪くなる。リン酸は実の大きさに直接関係するので影響が大きい。
又pH五・五以下では、窒素肥料を分解する硝化菌の働きが悪く、アンモニアが硝酸に変化しないため、窒素の吸収が悪くなるといわれている。
結局、柿畑のpH値は五・五~六・五に収まるよう、時々、pH値を測定して肥料の量を調整しなければならない。