「一時間後にこの場所に集合して下さーい」という添乗員の大きな声が聞こえた。
不思議そうに私に笑みを送ってきた人に、一時間を楽しんでね、と心を伝えた。私達もこの団体の一員で有ったかも知れないと思いながら旅路で何かを見付け出してほしいというエールを心の中で送っていた。
決められた枠の中とはいえ、思わぬ発見が有るかも知れない。人には思ってもないようなところに意外な人生が潜んでいる。
海外で生活していることが日常化して、夫がヨーロッパに同行するようになってから、夕刻迫ると「おい旨いメシは無いのか」と言うようになった。
私は「無いでーす」と軽く受け流す。アメリカ滞在では耳にしなかった要求であった。
正直私自身もいくら買付け中であるとはいえ二週間近くにも及ぶ満たされない食生活の日々に、日本に戻る迄の我慢我慢の忍耐もここに至り限界であったのかも知れない。お互いにレストランやパブ等で済ませることを好まないが、ぜいたくなものが食べたいということではない。究極あの炊きたての御飯を望んでいるのである。
夫の同行は何かと手がかかり、お役立ちではないけれども二人の方がはるかに楽しかった。不満の原因はわかっていた。好みな食で満たしてあげよう。それは、それ程難しいことではない。
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