ああ、でも。さっき西海の姿を見て近寄って来ようとした女子が、私の姿に気づいてどこかに行ってしまったのを思い出す。目つきの悪い西海の姿を見て避けたのかと思ったけど、あれは私と西海がデートでもしていると思って気を遣ってくれたのかもしれない。余計な気を遣わせてしまった。
そうこうしている間に試合開始のホイッスルが鳴る。
視力は良いほうなのだが、そもそもサッカー部に知っている顔が少ないため、遠くで動き回っていると誰が誰だかわからない。かろうじて、あれが東堂かな、と推測できる程度だ。西海はこんな中からでも真っ先に東堂を見つけるんだろうな、と思いながら隣を見る。
西海は大きいカメラを取り出しているところだった。いわゆるデジタル一眼レフというやつ。
言葉を失った。
スマホの画質が格段に上がった現代において、写真撮影の主流と言えばスマホだというのに。こいつはなぜあえてこんな露骨に写真撮影しますよと宣言するようなカメラを持ち出してきたのか。馬鹿じゃないのか。捕まりたいのか。捕まるな隣に私がいないときに捕まってくれ。
耐えきれずに私は西海に問いただす。
「なに、そのカメラ」
「さあ、学校のカメラだから俺もそこまで詳しくはない。メーカーくらいなら答えられるが、製品名とか型番までは把握してないな」
「違う違う、カメラの型番なんて聞いてない。聞いてもわかんない。なんでそんな本格的なカメラを構えてるんだって話」
「写真を撮るからだ。それ以外ないだろう」
「どうしよう、こんな堂々とした盗撮初めて見た」
「盗撮じゃない。れっきとした部活動だ」
そう言いながら西海は私に一枚の紙を渡してくる。
備品借用書、写真部、三年A組西海十李。あとはカメラの型番やら借用期間やら顧問の先生の名前が書いてある。
西海って写真部だったのか。初めて知った。漠然と生徒会とかだと思っていた。あ、でも、生徒会に入ったら東堂をストーキングする時間がなくなるか。
「俺は写真部の活動として校外に備品のカメラを持ち出す許可を顧問からもらって、被写体であるサッカー部からも今回の試合を撮影する同意を得ている。よって俺のこの撮影は部活動の一環だ。なんの問題がある?」
「ひどい、部活動の一環とか言いながら公私混同してる」
「失礼な。公私で目的が一致しているだけだ」
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