【前回の記事を読む】何度連絡をしても、彼女から返信は無い…SNSの最終ログインは数時間前——少なくともそれまで彼女は生きていた。
第一章 〜それぞれの夜、それぞれの真実~
01 2009年 渋谷 友美の失踪
アンナは微笑んだまま、「今度の卒業シーズンに『青春祭』ってイベントのスタッフ募集してるんだけど、興味ない? 下北沢のイベントスペース貸し切ってやるんよ。隆弘、夏のイベントの時も手伝ってくれたよね。慣れてるかなって思って」と切り出す。
隆弘は考えるような素振りを見せるが、気もそぞろだ。友美が行方不明なのに、イベントスタッフなど頭に入らない。
「今それどころじゃないんすよ……考えておきます」
その時、アンナの後ろから黒髪ロングヘアの可愛い女子高生が顔を出す。彼女は麻里奈。黒髪ロングを緩く巻き、リップグロスが夜の光を受けて唇を輝かせている。大きな瞳と、上目遣いの目が印象的だ。ブラウンのブレザーに赤いチェックのスカートという芸能系の高校ならではの華やかな制服が人目を引く。
「えー、一緒にやろうよ〜!」
麻里奈は楽しげに声を上げ、その動きは軽やかだ。彼女は可愛いが、これといって強烈な個性は感じない。ただ、その可愛らしさが渋谷の街に溶け込み、自然体でいること自体が強みなのかもしれない。イベントのスタッフなど、ノリで参加できる自由さを彼女は持っているようだ。
「……あれ、麻里奈だっけ? 前にどっかで会ったよね?」
隆弘は思い出そうとする。麻里奈は「覚えててくれたの〜? 嬉しい!」と嬉しそうに笑う。その笑顔は心地よいが、隆弘は今、友美を捜すことで頭がいっぱいで、純粋に喜べない。
アンナは再び会話を引き取り、「涼介の彼女も出演するってよ。何かバンドのボーカルなんでしょ?」と話題を変える。
涼介はちょっと驚いたように目を見開き、「あぁ、そうだね。確か出るって言ってたな」と答える。こうした情報をアンナが知っていることに軽い戸惑いを見せているようだ。彼は普段からガツガツ前に出ないタイプで、隆弘を補佐する立ち位置が多い。二人は息が合っている。
この街では、友人や恋人もまた複雑なネットワークの中で仕事や夢を持ち、交差しているようだ。
「ま、考えておいてよ」アンナは微笑んで、何気ない仕草で髪をかき上げる。
そして静かに微笑んだまま、「色々あんのよ、こっちも」と小さく呟くように言葉を付け足す。
すると、麻里奈がふと口を開く。