しかしそれだけでは自分自身を保つことができなくなっていたのか、わたしは様々な奇行に走ることになる。

新聞広告のチラシの裏の白紙の面にいろんな絵を描くことが好きだったのだが、「憧れの応接間」はカーテンのしわの一本一本やテーブルの彫刻、クッションの柄やティーセットのカップとソーサーの形や紅茶の色、添えられたレモンの厚みなど細部に至るまで全てにこだわり、しかも同じようなものを何枚も描いた。

そしてそれらは残すことなく、誰の目にも触れることなく、ビリビリに引き裂いて丸め、ゴミ箱に棄てた。

ある時は、顔の側面にかかる髪の毛を二、三本つまみ、舌先と上唇でそのトゲトゲした感触に全神経を集中させた。それだけでは気が済まなくて、前歯で少しずつそれらを切断し飲み込んだ。

これは無意識に行われていたようだ。というのも、さっきからずっとわたしを観察していたであろう斜め前の席の男子が

「髪の毛、食べてる」

と教えてくれたからだった。

そうなのだ。わたしは自分が髪の毛を舐(な)めているところまでは意識があったのだが、その先の行為については全くの無意識であったので、指摘されて初めて気づいたのだ。

「髪の毛を食べるなんてもうやめよう。また誰かに見られたらたいへんだ」

そう思った。

そうか、ということは、見られなければいいのだと次に起こした行動はとても不衛生極まりない奇行だった。

 

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