【前回記事を読む】ぞっとした。気持ち悪い。一体いつ手に入れた――部下の遺品は小さな肌守り。中には、彼の頭髪と見覚えのある私の髪が一房…

第三章 赤いチューリップ

「──さん、ちょっと来てくれる?」

終礼の前の少しざわついた教室内で、担任教師がわたしを呼んだ。先生に呼ばれるのは苦手だ。だって、先生に呼ばれるのはいつも、未払いの給食費、忘れ物のこと、宿題をやってこなかった理由などを聞かれる時だからだ。

「はい、これ。遠足の写真、さっき取りに来なかったでしょう?」

先生はとても穏やかな優しい女性で、昨年結婚したと聞いている。栗色でふんわりつやつやの髪、白くて透明感のある美しい肌をもつ女性。まるで女神さまのような憧れの先生だ。

わたしはおずおずと、先生の顔色を窺(うかが)いながら、少しだけ顔を上げ上目遣(うわめづか)いで先生を見た。

先生は少し眉をひそめて、

「写真代は、また今度でいいのよ」

と、にっこりと微笑む。だけど先生が一瞬、哀(かな)しげで憂(うれ)い、憐(あわ)れむような表情をしたのをわたしは見逃せなかった。

まただ。わたしのことをこんな目で見るのは、この優しい先生だけじゃない。同級生のお母さん、隣近所の住人、近所のお菓子屋さんのご主人、叔母達までもが、なぜかわたしをそんな目で見ていることを、わたしは知っている。