転職や引っ越しを繰り返し、体力も時間もすり減らしていった。

円満な家庭を夢見ながらも、出会うのは詐欺まがいの相手ばかりだった。

無責任な相手に幾度となく振り回された挙句、三十三歳で結婚するも踏みにじられ、数年で破綻した。

陰険な者たちが行く先々で待ち構え、見えない罠にはまり、怯えの影にさらされる忍従の日々を送った。

彼女は自信を打ち砕かれ、劣悪な環境の中で悪意に立ち向かえない性分を悔やみ、ただ黙して不善を穏便にやり過ごした。

非難は容赦なく襲いかかり、弁解する度胸もなく損をし、身に覚えのない噂を立てられもした。

あらゆる不利な仕打ちに歯向かうことなく、彼女は心に千の傷、万の傷を負った。

それでも他人と摩擦を起こしたくなかった。

彼女は抵抗する勇気を失った。

対立するより人を信じたかった。

生来疑うことが身につかず、性懲りもなく騙され、裏切られた。

意地の悪い待遇を受け、否応なく苦渋をなめ尽くす自分がひどく惨めに思えた。

それでも無心に誠意を尽くして奔走し、彼女は常に最善を尽くしてきた。

悪に手を染めず、淫らな儲け事に陥らず、ひたすら律儀に働いた。

不誠実で高慢で人を蹴落とすような輩が大勢上にいて、良い生活を享受している現状の不条理に彼女は消沈した。

彼らは人を見下し、貧しい者を卑しみ、侮って厚かましく生きていた。

逆に自らは誰も傷つけず、助けの必要な者には微力ながらも世話をし、見返りを得ることはなかった。

献身的に生きる人間が豊かになれず、幸福に縁遠いのはどうしてなのか。

なぜ、これほどの理不尽がまかり通るのか。

善行を積む心優しい人間が、どうして辛い環境下で苦しまなければならないのか。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

👉『ルイセイⅠ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】お風呂上りに優しく体を拭いてくれた彼。下着はいいよと言われて、素肌にバスローブを。大きなベッドにエスコートされ…

【注目記事】少し体を離すと、近い距離で視線が絡んだ。すると彼は触れるだけのやさしい口づけをした。ゆっくりと唇が重なり、2人は手を繋いで……