もともとこの空洞には、高さ数メートルに及ぶ天然水晶の太い柱が四方に群立していたらしい。

だが宇宙船から放射された二千度近い光線によってそれらを溶かし、この一帯にクリスタルガラスのフロアを築いたのだという。

地底空間の圧力は、常備の重力調整装置により快適に維持されているとリフィエラは説明した。

宇宙船が地底へ潜る際には、あの広大な沼から沈降し、岩盤に沿って湖との接点へ至り、空洞を突破して水晶の柱の前で停止したのだった。

その地点でフロアと入口をコスモロイドに造らせ、空洞を整備して安寧の地底空間を確立したとされる。

ジュランは人間社会の雑踏を完全に遮断した、至極の安らぎを与えてくれる大地の懐に抱かれたことを知った。

気持ちが安定するにつれ、虐げられて衰弱した彼女の精神は徐々に回復していった。

それと同時に、凄惨な半生の記憶と相まみえざるをえなくなった。

辛酸をなめてきた経験が濁流となって頭の中へ押し迫り、荒れ狂った。

遡ること十五年前の二○○九年、彼女はアーティストを志して一流美大を受験するも失敗し、三浪の末に挫折した。

浪人とは言え、実際には家庭の事情でアルバイトに日を削り、学業に専念できる状況ではなかった。

波乱を経て、片田舎の実家を出て九州北部の都市へ移った。

彼女はパートで働きながら賃貸マンションで孤独な生活を始めた。

一般の大学より経費がかさむ美大進学を断念し、自活するために日々の労働と両立できる夜間大学へやむなく入学した。

昼は仕事、夜は通学という暮らしを続け、卒業後は小さな会社で不本意な職に就いた。