しかし、庭師がいて定期的に剪定(せんてい)をしているとは思えない。うっそうとしていて、まるで林のよう。日の光も入らず、奥までは見渡せなかった。バサバサッと、カラスなのか、鳥たちの飛び立つ音が聞こえた。

外観を見るかぎり敷居は高そうだと思ったが、塀は淡いクリーム色できれいな印象を持った。しかし、門は固く閉ざされ、敷地の中ははっきりいって不気味に感じた。その中を、飛鳥は一歩一歩、奥に向かって歩いた。ただでさえ不安でいっぱいなのに、この不気味な雰囲気も重なって、飛鳥の足取りは自然と重くなった。

飛鳥には両親も親戚もいない。ひとりぼっちだ。

どういう経緯で引き取られたのかは聞いたことがなかったから知らないが、物心がつく頃にはもう飛鳥は親のいない、または引き取り手のいない子どもたちが暮らす養護施設で育っていた。

その養護施設は、藤森学園といった。

藤堂飛鳥という名前も、学園長がつけてくれたと聞いていた。

本当の両親や親戚がどこかに生きていて、いつか自分を迎えに来てくれる。学園に暮らす子どもたち、みながそう思いながら生きてきた。飛鳥もまた、そう願いながら毎日を送ってきた。

常に自分たちは不幸だと悲観して暮らしているわけではなかったが、それでもふとした瞬間、心のすきまに入り込む強烈な寂しさにおそわれる。早くこの場所から救い出して欲しい。子どもたちはみな叶(かな)う可能性がたとえゼロに近くとも、そんな願いを込めて今とはまったく違う将来の自分を夢見ていた。

次回更新は6月4日(木)、7時の予定です。

 

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