午後、体重測定。
減っていた。
「水が抜けてます」
看護師が言う。
「努力してないのに」
「腎臓が努力してます」
その言い方が好きだった。
だが夕方、数値の反動が来た。血糖が上がった。
「ステロイドの影響です」
「分かりやすい」
「分かりやすすぎます」
インスリン注射の説明が始まった。
「え、そこまで」
「一時的です」
「“一時的”ランキング何位ですか?」
「上位です」
信じることにした。
注射は思ったより痛くなかった。
「どうです?」
「悔しいけど平気です」
「悔しい?」
「ビビってたので」
人は痛みに勝つと少し偉そうになる。
夜、メンタルが落ちた。
理由は分からない。ステロイドの波か、疲労か、現実か。
全部だろう。カーテンを閉めた空間は、時々狭すぎる。
私はメモ帳を開いた。
【今日、ちょっとしんどい】
それだけ書いた。
長文は無理だった。
その時、母からメッセージ。
――母。
顔どう?
丸い。
写真送った。
思ったより月。
うるさい。
でも元気そうで安心。
それで少し救われた。
“見た目が悪化=生きてる証拠”という解釈もある。
消灯前、看護師が来た。
「今日どうでした?」
「ジェットコースター」
「上と下、どっち多かったですか?」
「両方同じくらい」
「じゃあ正常です」
「正常の基準が独特ですね」
「ここではそれが普通」
病棟の普通は、世間の普通と少し違う。
寝る前、私は決めた。数値に振り回されすぎないこと。
でも、ちゃんと見ること。無視もしない。依存もしない。
その距離感が、たぶん長期戦のコツだ。