【前回の記事を読む】自動車部品の横領。整備したフリをして消耗品などの部品をフリマサイトに横流し。動機は「酒代に充てたかった」整備業界が抱える課題とは…

はじめに

本書の読み方について

本書は、自動車整備業界における「採用」と「転職」という二つの側面を深く掘り下げて執筆しました。

そのため、採用を考える企業の方々(経営者、採用担当者、工場長など)と、転職やキャリア形成を考える整備士の方々(求職者)のそれぞれを主な対象としています。

著者が自動車整備士の方々の実際のキャリアコンサルティングや、整備の現場における生きた情報を通じて得た知識と、普遍的なノウハウに基づいて書いています。

内容は多岐にわたり、非常に実践的です。巷で見かけるような奇抜な「ゲリラ的な」テクニックではなく、採用と転職におけるごく基本的な原則や、普遍的な知識を中心に構成しているため、「それはもう知っているよ」と感じる部分もあるかもしれません。

しかし、ご安心ください。本書は、読者の皆様がそれぞれのニーズに合わせて、最大限に活用いただけるよう工夫を凝らしています。

そのために、第一章から第七章までの各章に、細かく見出しを設けました。 これにより、必ずしも最初から順に読み進めなくても済むようにしました。

例えば、経営者や採用担当者の方は「求める人物像」に関する章から、転職を考えている整備士の方は「退職交渉」に関する章から読み始めるなど、ご自身のいま抱えている課題や興味のある箇所から読み始めていただいても、十分に有益な情報を得られるように構成してあります。

もし、興味を持った箇所から読み始めて「この本、なかなかためになるな」と感じていただけたら、ぜひ他の章も読み進めてみてください。新たな発見や、これまで見過ごしていた重要な視点が見つかるかもしれません。

ぜひ、この一冊を、ご自身のキャリアや組織の未来を考えるための「辞書」や「ガイド」として、心ゆくまで楽しんでいただければ幸いです。

第一章 なぜ、今、整備士採用が重要なのか?

自動車業界の現状と整備士不足の深刻度

日本の総人口は、2004年をピークに減少の一途を辿り、以降の100年間で100年前(明治時代後半)の水準にまで戻ると予測されています。

この変化は、千年単位で見ても類を見ない、極めて急激な減少であり、その事実は総務省のホームページでも確認できます(「国土の長期展望」中間とりまとめ概要(平成23年2月21日国土審議会政策部会長期展望委員会))。

総務省の予測によれば、2050年には総人口が1億人を割り込み、2100年には3770万人にまで減少するとされています(※図②参照)。

100年後の日本の姿がどうなっているのか、想像することすら躊躇してしまいますが、自動車整備業界においては、この人口減少の影響が他の産業に先駆けて顕著に表れるのではないかと危惧しています。

これまで法によって義務付けられてきた車検制度が将来的に見直される可能性も指摘されています。

さらに、自動車技術の急速な進化に伴い、従来の整備そのものが不要となる時代が到来するかもしれません。

しかし、そうした未来の変動要素以上に、現状において喫緊の課題として存在するのが、労働力人口の減少を上回るスピードで進行している深刻な整備士不足です。

この人材不足は、自動車業界全体の正常な機能に早急な対策を必要とする、差し迫った問題と言えるでしょう。