【前回の記事を読む】品質管理の要である自動車整備士の現状――日本の自動車の「安全」と「信頼」を維持するために
はじめに
50代30年の経験と年収350万円の現実
そんな熟練の整備士さんが、大学に進学するお子さんの学費のために、切実に給与改善を望んでいらっしゃいました。
現在の年収をお伺いすると、約350万円とのこと。30年という歳月をかけて培ってきた技術と経験、そして地域社会への貢献を考えると、この数字はあまりにも重く、胸に深く突き刺さるものでした。
しかし、残念ながら、このようなご相談は決して珍しいことではありません。
この現実は、自動車整備士という専門職の価値が、その労働に見合うだけの報酬として十分に反映されていないという、目を背けることのできない事実を静かに、しかし痛烈に示しているのではないでしょうか。
整備士の不正行為に潜む深刻な背景
自動車整備業界に光が当たるたびに、その裏側に潜む「闇」が露呈することがあります。
特に近年、大手中古車販売会社で発覚した一連の不正行為は、業界全体の信頼を大きく揺るがしました。
記憶に新しいのは、ビッグモーター社による大規模な保険金水増し請求事件です。
2023年夏以降、複数のメディアで大きく報じられたこの問題は、顧客から修理を依頼された車両に、故意に傷をつけたり、不必要な部品交換を行ったりすることで、修理費用を水増しし、損害保険会社に不正に保険金を請求していたというものでした。
報道によると、ゴルフボールで車体を叩いて雹(ひょう)害に見せかけたり、ドライバーでボディを引っ掻いたりするなどの悪質な手口が用いられていたことが明らかになっています。
この不正行為は、過剰な営業ノルマが背景にあったと指摘されており、まさに整備士が直接、顧客の信頼を裏切る行為に加担させられていた実態が浮き彫りになりました。
しかし、これは大手企業に限った話ではありません。整備士の方から間接的に伝え聞く話のなかで、驚くべきことがあります。