「ありがとう! 本当にうれしいです。それでは明日チューリッヒ16時20分のフライトです。アーランダ空港のチェックイン前に13時でどうですか。場所は……」
「了解いたしました。顕治さんとの再会を楽しみにしています」
悪夢のようなコロナ感染からの脱出、顕治はチピタとのこれからの旅行に大きく胸を膨らませた。
会ってまもないが、チピタが一番つらいときに臆せず助けてくれたという事実。これによるチピタへの顕治の信頼が、強固なものになっていくのを感じていた。
人には必ず別れが来る。しかし妻との別れはあまりに早かった。
一人暮らし、寂しさから一人旅を始めてもう12年になる。一人暮らしにも慣れて暮らすことができるだけでありがたいと思うけれども、どうにも慣れないのが寂しさだった。
妻は小学校の教師をしていて、彼女といると仕事の話から子どもの話と話題が尽きなかった。二人の娘が地方の大学で下宿生活をしたとき、二人だけの生活も楽しかった。妻が言った。
「とうちゃん、同僚から『娘さんたちが遠い地方での下宿でご主人と二人では寂しいでしょう』と言われるけど、寂しくないよね」
顕治の趣味でもあるマラソン大会に出場し、ゴールしたとの知らせに、運動はあまり好きでないといっていた彼女からの「よかったね!」のひとことで顕治はほっと安心したものだった。
旅も好きで、これから退職したらこんな旅をしようと夢を語り合った。
その夢も叶えられなくなり、諦めていた。何より一人暮らしでは人と話をする機会が減った。毎日のように教室で授業をし、生徒たちと会話することが仕事だった顕治にとって、話ができないということが潜在的なストレスになっていると自覚していた。
だからチピタとの出会いは、顕治にとって妻との楽しい日々の再現であり夢の実現でもあった。
チピタのような人と一緒に住めたら……顕治の妄想は広がっていく。
【イチオシ記事】「凄いイケメンくんだ…ちょっと想像以上だわ」肩から少しずつ脱がされ、身体を重ねるような密着マッサージがはじまり…