「これは横山様、お久しぶりでございます。いかがでございますか、ピンク・ムーンは」

横山と呼ばれた老婦人は遠藤を見下すように言った。

「いただけないわね。こんな偽物をあんなにお高くとまらせるなんて」

その言葉に遠藤の顔が青くなり、周囲の人々までが騒然とし始めた。

「偽物……とおっしゃいますと?」

「偽物だから偽物と言ったんです。私は宝石に目がなくてね。だからこういう展示会の時は必ずこちらの小島さんのような一流の鑑定士にご一緒いただくんです。騙されて三流の物を買わされないようにするために」

紹介された坊主頭の小島がばつが悪そうに言った。

「はっきり言ってあれはダイヤじゃない。ただのガラス玉です」

「何ですって?」

遠藤は狼狽し、周囲は一層騒がしくなった。

「どういうこと……」

麻利衣も唖然としてその様子を眺めていた。遠藤はすぐにリスクマネジメント部長の石原を呼んだ。彼女は慌てて会場に駆け付けた。

「一体どうなってるんだ? 君の責任だぞ!」

「そんな。確かに貸し出された時は本物であることを鑑定士に確認してもらっています。偽物だなんて……。確認します」

彼女は警備員に指示して台座からガラスケースを下ろし、騒然とする会場を後にしてスタッフ控室へ運び去った。賽子、麻利衣に千晶まで後に続いて控室に入った。石原がガラスケースを開けてピンク・ムーンにダイヤモンド・テスターを当てると、それが偽物であることが完全に明らかになった。

「まさか、こんな……」

石原は愕然とした。遠藤は膝を叩いて嘆いた。

「はあーっ! もうおしまいだ。この責任はきっちりつけてもらうからな! とにかくお客さんには帰ってもらう」

遠藤はバンと大きな音を立ててドアを閉めて出て行った。残された石原はショックのあまり呆然と偽ダイヤを見つめていた。

次回更新は5月23日(土)、21時の予定です。

 

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